







作品概要
- タイトル: 【FANZA限定特典付き】五時
- 著者: 山本直樹
- 出版社: 太田出版
- ジャンル: 学園もの
あらすじ
※FANZA限定電子購入特典『五時』下描き集 収録!「いま何時?」山本直樹、6年ぶりの完全新作。
ロングセラー『田舎』から6年、巨匠・山本直樹は今がいちばんエロティック。
捨てられる大量の本。
入ってはいけない二階。
ブラインドの向こうから、やつらの駆けてゆく足音と歓声が聞こえる。
今日もブラインドのこちら側で、わたしは──。
画業40年を経てなお二次元エロス表現の最前線を切り開く、覚醒と静謐のピュア・エロティック・フェアリー・テール。
「マンガ・エロティクス・エフ」にて連載中の『山本直樹 最新作品集』で発表された作品群を収録するほか、単行本未収録レア短編「七時」(8P)も併録。
感想・みどころ
ロングセラー『田舎』から6年、巨匠・山本直樹が完全新作『五時』を引っさげて帰ってきた。画業40年を数えてなお衰えることのない筆致で、静けさと覚醒とが同居する独特のエロティシズムを描き切った一冊だ。山本直樹先生の作品を長く追ってきた読者はもちろん、名前だけ知っていて未読だった読者にも、このタイミングで手に取ってほしいエロ漫画である。
捨てられる本、入ってはいけない二階――静謐な導入が語るもの
「捨てられる大量の本。入ってはいけない二階。」という書き出しから、この作品がただの官能描写に終始しない作家性を持っていることが伝わってくる。物を捨てるという生活の営みと、足を踏み入れてはいけない禁忌の空間。この対比が、読者を静かに物語の内側へと引き込んでいく。ブラインドの向こうから聞こえる誰かの足音と歓声、そしてその手前側にいる「わたし」という一人称の孤独。声高な煽りではなく、こうした距離感の演出によって緊張を積み上げていく手法は、まさに山本直樹先生ならではの筆力と言えるだろう。
「いま何時?」に滲む覚醒と静けさのエロティシズム
タイトルにも冠された「いま何時?」という問いかけが象徴するように、本作は時間の感覚そのものをテーマに据えている。ブラインドの内側で過ごす「わたし」にとって、外の世界と自分のいる場所とでは時間の流れ方が違う。そうした感覚のずれこそが、覚醒と静謐という相反する二つの言葉を同時に成立させる仕掛けになっている。派手などんでん返しを畳みかけるタイプの作品ではなく、じっとりと積み重なる心理描写でエロスを立ち上げていく構成であり、シチュエーションそのものよりも、そこに至る空気の質感を味わいたい読者にこそ強く刺さる一冊だ。
巨匠・山本直樹の作風――『田舎』から続く生活実感の系譜
『田舎』でも見せていた、生活と性が地続きになった感覚は本作でも健在で、6年という歳月を経てなお、その筆致はむしろ研ぎ澄まされている印象を受ける。画業40年というキャリアを持つ山本直樹先生だからこそ描ける、二次元エロス表現の最前線という評は伊達ではない。派手な感嘆符の連打で盛り上げるのではなく、間合いと沈黙で読者の想像力を刺激する構成は、コメディ寄りのテンポの良さとは対極にある、じっくり系の読み味を求める層にとって理想的なバランスと言えるだろう。
FANZA限定特典と単行本未収録短編「七時」の存在感
本作の読みどころは本編だけにとどまらない。「マンガ・エロティクス・エフ」で連載中の『山本直樹 最新作品集』掲載作をまとめて収録しているほか、単行本未収録のレア短編「七時」(8P)も併録されている点は見逃せない。さらにFANZA限定の電子購入特典として「五時」下描き集まで付属しており、完成稿だけでなく制作過程の痕跡まで味わえる贅沢な作りになっている。連載を追ってきたファンにとっても、これから読み始める読者にとっても、この巻でしか得られない情報量が詰まった一冊だ。
こんな人におすすめの一冊
じっくりと積み重なる心理描写で読ませるエロ漫画を求める人。山本直樹先生特有の、生活感の中に忍び込む覚醒と静謐の感覚を味わいたい人。そして『田舎』のファンで、6年越しの新作を心待ちにしていた人には特におすすめしたい。レビューを読んだだけでは伝わりきらない、ブラインドの向こう側の空気をぜひ実際にページの中で確かめてほしい。


